桐山  啓一 / Keiichi Kiriyama

Interview


建築家になろうとしたきっかけと、建築家としての軌跡を教えて下さい。

ぼんやりと建築家を意識し始めたのは、高校生の時です。ただ、その時は、建築の道に進むか、音楽の道に進むか、悩んでいました。昔からものづくりが好きだったので、クリエイティブな仕事をしたいということだけは決めていました。小さい頃からピアノやバンドをやっていたので音楽にも大変興味があったのですが、プレイヤーというよりも、音楽そのものであったり、ライブや音響空間など作り上げることに興味を持っていました。ライブやコンサートに行っても、どうやって表現しているんだと、仕掛けや裏側が気になってしまう性格でした。とにかく、何かを作り上げる仕事をしたいと思っていました。

大学では建築を学びましたが、住宅を豊かな空間にすることで人生自体が豊かになっていくのではないかということに、思い至りました。また、建築は総合的に知識を有していないと纏められないものですが、そのような点も非常に魅力を感じました。Frank Lloyd Wright、Frank Owen Gehry、Renzo Pianoらの作品にも大変魅了され、人生をかけて突き詰めていきたいと思い建築家を目指そうと思いました。

大学卒業後、住宅の設計を基礎から学ぶため、岐阜市内の設計事務所に入所しました。厳しく指導をして頂きましたし、現場も任せて頂きました。住宅設計の基本的な部分をここで学んだと思います。

その後、広島のSUPPOSE DESIGN OFFICEで働かせていただきました。考え方や自分が思い描く造形のイメージに、大変近いものを感じたのです。ここでは、型破りな発想をたくさん体験させていただきました。こういうことはできないという縛りに囚われず、素材、スケールの大きさ、間取りなど、色々と挑戦することができました。

2009年に、岐阜県大垣市にAIRHOUSE DESIGN OFFICEを設立しました。空気感をデザインしたいという思いから、この名前にしました。空気感というのは、何も建築空間に限ったことではありません。お客さん、工務店さん、スタッフとのやり取りを含めて、建築を通じて全てが良好に気持ち良く進めたいという思いです。そこをデザインすることで、結果として楽しく豊かな心地よい生活をご提供できるのではないかと考えています。

桐山さんの作品の特徴を教えてください。

自分が、この形、素材が好きということはあまりないと思います。どのような形、素材であってもオーダーに応じて設計できることが、自分の強みだと思いますね。だからどんなことであっても、オーダーしてほしいです。

僕は2つの設計事務所で仕事をしてきましたが、今の僕のデザインにそこでの経験が影響を与えているかというとそうではないと思います。今までに海外・国内への旅行やレストランで食事をしたりする中で体験したものや、書籍や雑誌などで見たもの、お会いした人々など様々な影響を受けている部分は大きいですね。また日常の中で「あったらいいな」と思うものを常に探している部分はかなりあるかもしれません。ですので、新しいものにトライされたいという方や、悩んでいらっしゃる方は本当にお声掛けいただけますと嬉しいです。

設計するにあたって、桐山さんが大切にしているものは何ですか?

「考え方を設計する」ということを、いつも心がけています。考え方というのは、どういう意図をもってこの設計をするのかということです。この考え方の純度を落とさないで形に落とし込むことが重要だと思います。例を挙げれば、お客さんが広いリビングを欲しいとおっしゃったとします。どういうことが、広いリビングであるといえるのか。面積が広い、視線が通りやすい、天井高が高いなど、いずれも広いといえるわけです。お客さんとの対話の中でそれを聞き出すとともに、この住宅はどうあるべきかをしっかり考えます。実際にデザインに落とし込むのは、その後です。

よって、お客さんとの対話をとても大切にしています。どういう家を作りたいのか、雑談もしながら話をしていきます。お客さんは何が本当にやりたいことなんだろう。お話しを聞きながら、考えを整理していきます。

建築家とお客さんとは、お互いに相談し合いながら設計していくのが良いと思っています。そのため、詳細な模型を作って、お客さんとイメージを共有することも重視しています。自分がイメージしていることを共有して、お客さんとのイメージのズレをなくしたいからです。模型は、お客さんと建築家が目指しているものを一致させる強力なツールだと思います。

もう一つ大切なことは「要望を叶える」ということです。できることなら100%叶えて差し上げたいと本気で考えています。やはりクライアントさんの住まいですからその部分の自由度は大事だと思うし、それを当たり前のように叶えて自分のご提案をできるよう心掛けています。実際には要望の達成率は95%は超えているのではと自負しています。(笑)

そして、この一連の過程をいかにクライアントさんや施工していただく方々と楽しんでできるか。これが自分がもっとも大切にし、目指している部分でもあります。良い空気感ですね。

これから住宅を建てたいと考えている方へメッセージをお願いします。

住宅を建てたいと考えている方にとって一番キーになるのは、何と言っても予算だと思います。誤解されている方が多いのですが、建築家による住宅が高いということは決してありません。ハウスメーカーさん等の住宅は、ものの割に高いと感じることもあります。建築家による住宅の方が、間取り、素材など自由度が高いことは言うまでもありません。

また、建築家は、設計だけでなく監理にも携わります。施工にあたって、建築家がお客さんと工務店の間に入って調整をしますので、結局は良いものができるのです。

多くの建築家がいる中で、どの建築家に依頼するかを決めるのは難しいかもしれませんが、直感的に「いいな~」と思われた方にお願いするのが一番だと思います。僕の知る限り、そんなにハズレな建築家もいないと思いますし、ホームページなどを見られて、気になったら実際に会って話をされると良いと思います。たくさんの建築家に声をかけてたくさんプランを並べて考えるというやり方ではなく、調べられてお話を聞かれてから、1人に絞っていただき建築家にお願いすると快く受け入れてくださると思います。

家づくりや店づくりは本当に夢があって楽しいものです。決められたらお互いを信じて前向きに向き合うことがとっても大事だと思いますね!

桐山さんは、リノベーションも多く手掛けられていますね。

古い建物が多く出始めている時代です。良い中古物件を見つけてリノベーションをすることで、半分のコストで済むこともあります。リノベーションは、賢く家を所有するためには有効な手段であり、今の時代には大変フィットしていると思います。設備を更新したり、構造を補強をしたり費用のかかる部分もありますが、時を経た素材の質感は何ともいえない味わいもあります。古めかしい素材感がお好きな方は新築では出せない味もありますので、リノベーションもなかなかお勧めです。実際にこういった手法で若くても多くの方が素敵な空間を手にされているのを目の当たりにしていますので、とても豊かなことであると実感しています。

何か熱中している趣味等はありますか。

スポーツが好きで、特にサッカーやゴルフ、スノーボード等を楽しんでいます。また旅も好きで最近は温泉めぐりにはまっています。車や服も大好きですし、アートや食にもとても興味があります。

今までの作品のうち、印象的な作品を一つ紹介して頂けますか。

大野の家をご紹介します。お客さんが、富有柿の農家の方で、柿畑の中に建てるというプランでした。

お客さんからは、天井が高く開放的な空間にしたいという要望がありました。

7本の太い柱のようなボックスの上に大屋根を乗せたような構造として、プライバシーを必要とする空間はボックスの中、すき間の空間はLDK空間として大きくガラス面を確保した構成としました。開放感を感じながらも外部からは柿の木によってプライバシーは保たれて、内部はとても落ち着いた空間を確保できています。どの部屋からも空が見えるのはとても開放的です。

柿の季節による変化に応じて様々な風景を生じながら、あたかも柿に守られ柿畑に住んでいるような豊かな住空間になった住宅となりました。

Career

1978 岐阜県生まれ born,Gifu
名城大学理工学部建築学科卒業 卒業 Graduated from Department of Architecture,Meijo University
株式会社 向井建築事務所 Mukai Architecture Associates
SUPPOSE DESIGN OFFICE SUPPOSE DESIGN OFFICE
2009~ AIRHOUSE DESIGN OFFICE 設立 AIRHOUSE DESIGN OFFICE

Award

2014 第31回住まいのリフォームコンクール 優秀賞
2014 第一回全国リフォームコンテスト(ザメディアジョン) 最優秀賞
2014 第一回全国リフォームコンテスト(ザメディアジョン) 最優秀賞
2013 DSA空間デザイン賞 入賞
2012 DSA空間デザイン賞 入賞

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