私の父親が建築家で、幼少の頃から建築は自分の身近なものでした。ただ、本気で建築家を志すことになったのは、ずっと後のことです。大学生の時に、休学をして、半年ぐらいヨーロッパを周って来たんです。スペイン、イタリア、ギリシャなどを周りました。そこで、現地の建築学科の学生と建築物を見て周ったりしました。例えば、バルセロナでは、古い教会などの建築と現代建築が入り混じっている様子を見て衝撃を受けました。建築家という仕事を本気で志したのは、その時からですね。
大学では哲学を学んでいたんですが、建築家を志すようになってから大学に入り直そうかとも考えました。しかし、そうするには時間がもったいない。机上の勉強ではなく、実際に、現場で建築を学んだ方がいいと考えました。
そこで、岐阜に戻って、工務店に現場監督として入社したんです。現場監督として、どういう風に建物は作られていくのか、職人さんがどのように作業をしていくのかを良く見ることができました。その経験があって、現場で苦労するポイントというのは、良く分かっているつもりです。今でも、実際の施工をイメージしながら設計をしているので、現場監督や職人の方に話を聞いて設計を進めていくことも多いですね。
その後、設計の修行をするために、大阪の設計事務所に入りました。その設計事務所では、お客さん一人一人にとって一番良いものは何か、ニーズをよく汲取った上で、プランを作り出し、いかにお客さんにそれを伝えるかを学びました。
次に、関東の設計事務所に入りました。そこでは、一つ一つ突き詰めた作品作りというスタンスを学びました。ディテール、空間のあり方、スケール感を摑むトレーニングを積むことができたと思います。
哲学って、なぜだろうと突き詰めて考える学問だと思います。昔は、天文学や物理学も哲学者の学問だったんです。私は、哲学を学んだことで、物事を突き詰めて考えるというスタンスが身に着いたと思います。例えば、何かをいいな、とか、気持ちいいなと思った時に、その感じだけで終わるのではなく、何でいいのか、何で気持ちいいと思ったのかを、自分の中で理由を納得できるまで、そこに居続けたりしますね。疑問を持った時に答えを探し続ける、この考える姿勢を私はいつも貫いています。
住宅を設計するにあたっては、敷地環境、法規、構造、予算なども気にしなければならないし、お客さんの要望も色々お聞きしていくことになります。色々な情報が交錯する中で、何がテーマなのか、テーマというのはこの住宅を設計するにあたって大切にすべきものですが、これを考えていくことが重要になります。何に重きを置いていくかということですね。私は、この家作りで大切にすべきテーマを考える時に、お客さんと一緒に考えていくことを大切にしています。何を大切にしたいかという答えは、常にお客さんの中にあると思っています。それをいかに引き出していくかが、私の仕事だと考えています。
お客さんと話をしていくときは、多様な話題に及びますね。好みはもちろん、休みの時に何をするか、今の家の気に入っている所、気に入っていない所、家族の雰囲気などなど。イメージを摑むことができるまで、お話をお聞きします。
私は、イメージを摑めてから、プランを作り上げます。空間の雰囲気を摑んで頂くために、模型も作成します。私は、そこまでイメージを突き詰めてからプランを出しますので、お出しするプランは一つだけです。このプランが一番良いだろうというのは、ここまで話をしていれば絞れてくるものです。
はっきり言うと、かっこいいだけの建築、美しいだけの建築には興味がないですね。私の意識が向いているのは、そこに人が入ったことで、どうなるのか、その点だけです。そこに人が入ることで、その人が落ち着いたり、ずっとそこに居たくなるだろうか、そのことだけを考えています。
珍しいもの、奇抜なものを作ろうということではないです。
ただ、その人に合わせて建築を考えると、必然的にオンリーワンの建築になるということです。
今のまま、やり続けていくことしか考えていません。一つ一つお客さんに合わせて設計していくだけです。それを続けて言った結果、自分自身がどうなっていくかは分かりません。
県外に出てみると、岐阜には文化的にも歴史的にも素晴らしいところがあることに気付くのですが、住んでいる人がそれをあまり認識していないですね。街づくりという点では、その街、その場所になじむ建築を建てれば、それが街づくりになると思います。なじむというのは、目立たないけど存在感がある建物というイメージですね。
二つの中庭のある家を紹介しようと思います。バイクが好きなご主人、リビングにいる奥様、遊んでいる子供達、それぞれが好きなことをやっていても、中庭を通じて繋がり合えるというコンセプトです。デッキの高さも低く、芝生とリビングが一体化しており、中庭も家の中のようなイメージに仕上がっています。
© KAI NAKAMURA
1980 | 岐阜県生まれ | born,Gifu |
2003 | 雛屋建設社勤務 | Hinaya |
2004 | アトリエSORA勤務 | atelier SORA |
2008 | acaa勤務 | acaa |
2010 | 窪江建築設計事務所参画 窪江建築設計事務所HP |
kuboe architect & association |
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